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STEPN GO ホワイトペーパー 超読解

STEPN GOのホワイトペーパーを本気で読み解く
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Kurokawa(Kuro)
💡
本記事について
  • Web3プロジェクト、「STEPN GO」 についてのリサーチ記事です。
  • 2024年5月29日時点での情報を元にしています。最新情報ではない可能性があるのでご注意ください。
  • すでにSTEPNをプレイしたことのあるユーザー向けの記事になっています。
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FSL社から、ついにリリースが発表された新しいMove 2 Earnアプリ、「STEPN GO」
これまでのSTEPNは「STEPN OG」と呼称されることになり、GOのリリース後はOGとGOの両アプリが併存する状況になりそうです。(本記事では、それぞれ og と GOと記載します。両方とも大文字にすると見分けがつきにくいので。)
本記事では、GOにおける12個の新要素・変更点について、公開されたホワイトペーパーの情報をもとに読み解いていきます。
Overview | STEPN GO WHITEPAPER
STEPN GO is a Web3 lifestyle app featuring social and game modules. Its goal is to connect people globally. It centers on two of the most essential daily activities: staying connected with friends and family, and maintaining an active lifestyle.
Overview | STEPN GO WHITEPAPER
これさえ読めば、
  • STEPN GOにおける新要素全ての概要
  • STEPN ogにおける課題はなんだったのか
  • STEPN GOでは、それらの課題をどのようなアプローチで解決しようとしているのか
がザックリ掴めるような構成にしたつもりです。

はじめに

この記事の本題に入る前に、以下の2点を抑えておくと、理解がしやすいと思います。
  • ①GOのFSL経済圏における立ち位置は、GasHeroと似ている。
    • GMTの消費先として機能
      • ゲームが活気づくほどに、GMTのバーン量が増えていく
    • 今後も、ogだけが、GMTの唯一の生産手段であり続ける
  • GOは、ogにおける種々の”課題”を改善したアプリである。
    • これから紹介する12個の新機能は、ほとんどが ”ogにおいて解決したかったけれど解決しきれなかった課題” に対する回答になっている。
    • そうしたogにおける課題のうち最大のものは、以下の3つであったと思われる。
      • ソーシャル要素の欠如
      • 新規ユーザーのオンボーディングプロセス
      • “真面目に歩く” ユーザーへの利益配分構造

1. 新トークン:GGT

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  • GGT(Go Game Token)は、STEPN GOで新しく導入されるトークンである。
    • ユーティリティートークン
    • STEPNにおけるGSTとほぼ同じ立ち位置と考えてよい
      • 歩くと稼げる、Efficiencyによって稼ぎ効率が異なる
      • 一日に稼げる量に上限が存在する
      • ゲーム内で多くの使用用途が存在する
      • 無限発行である
  • GGTとGSTの相違点
    • 運営が徴収したGGTは、DEXを通じて、GMTに自動変換される仕組みを持つ
      • 運営による徴収の例
        • 不正行為を行なって凍結されたアカウントの資産
        • 一定期間ゲームをプレイしなかったユーザーに課せられる、稼ぎペナルティ(PAPER FEET(後述)) など
      • →GGTの存在自体が、GMTに対する恒常的な買い圧力として機能するようになっている。
    • ガス代・アセット売買時の使用通貨として使いやすいトークンになる(はず)
↗️
課題:ゲームプレイにおいて、意識しなければいけないトークンの数が多い
  • SOL・ETHといった各チェーンのネイティブトークンは、ゲーム体験と強く紐づいていないにも関わらず、STEPNをプレイする上で必ず触らなければいけないものになっていた。
    • これらは、特にクリプトに慣れていない新規ユーザーをゲームに引き込む上で、大きなハードルの一つになっていた。
解決:ユーティリティートークン(GGT)が、各チェーンのネイティブトークンの役割を担えるようにする
  • GGTとGMT、2つのトークンのことだけを知っていれば、ゲームプレイには十分な状態へ

2. 新パラメータ: Charm・Karma

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  • 靴のパラメータが変更になっている
  • og
    • Efficiency
    • Luck
    • Comfort
    • Resilience
  • GO
    • Efficiency
    • Luck
    • Charm ←New
    • Karma ←New
  • なくなったパラメータ2種
    • Comfort
      • MoveすることでGMTを稼ぐ…というアクションはできなくなったので、Comfortは削除。
      • HPの概念もなくなった
    • Resilience
      • 靴の耐久度や修理といった概念がなくなったため、Resilienceは削除
      • マラソンイベントで活躍する予定だったが、これはKarmaによるPvPランキングが代替すると思われる
  • 新パラメータ2種
    • Charm
      • OF (Outfit Fragment(衣装のかけら))を獲得する効率を決定する
    • Karma
      • PvPランキング報酬の獲得に関与
        • カルマ値の高い靴で、たくさんエナジーを消費するほど、ランキングで上位にいける
          • 24時間集計のランキングで上位になるほど、シャーデンフロイデプールからの割当量が増える
  • 各ユーザーは、Move前に「4つのモードのうち、どれを選択するか(4つのパラメータのうち、どれを参照して報酬を獲得するか)」を選ぶ仕様に。
↗️
課題:「各ユーザーの好みに合わせたMove報酬設計」が実現できていない、
  • 「どんな形の報酬に、やる気が出るか」は、人によって様々
    • 同じ”金銭的報酬”を渡す場合でも、どんな渡し方が良いかは人それぞれ
    • 数値を愚直に積み上げることに喜びを感じる人、ギャンブル的な刺激に駆動される人、他人と競い合わないとやる気が出ない人。いろんなタイプがいる
    • Moveという毎日行う行為が、テンションが上がりやすいものになっているかは非常に重要
  • ogにおいては、
    • GSTアーニングとGMTアーニングの体験の差別化はあまりできていなかった。
    • Luckによるミステリーボックス獲得は、全員がほぼ強制的に関わるものになっていた。
解決:パラメータと対応する4種の報酬設計を実装
  • STEPN GOでは、4種の中からどのモードで稼ぐかを選ぶ形式に
    • 4種のモード
      • Effi:GGT
        • For:一定の数値が積み上がっていくことが好きな人
      • Luck:MB(ジェム)
        • For:毎日報酬が変動する方がワクワクする人
      • Karma:GMT
        • For:ランキングなどで他人と競うことでやる気が出る人
      • Charm:OF(衣装のかけら)
        • For:コレクションを少しずつ集めることが好きな人
    • 下に行くほど上級者向けの選択としてデザインされている。
      • GGTは誰もが必要なものであり、衣装を必要とする人は最も少ない
      • GGTに関わるルールは最も簡単で、PvPやOutfitに関するルールをきちんと把握することはハードルが高い
  • これによって、ユーザーは「自分が一番気持ちよくMoveできる報酬体系」を選択してプレイするように
↗️
課題:ジェムが、市場原理に基づいた価格調整がされにくい
  • GSTとGMTは、どちらを獲得するかを選択する関係(排他関係)になっていたため、GMT⇔GSTは需要・供給のバランスが調整されるようになっていた。
    • しかし、Gemはこの排他関係に入っていなかったため、需給の自動調整がうまく働かず、価格コントロールのしづらい存在になっていた。
  • GasHeroで、5種のアセット(ポーション・缶・武器・ペット・クッキー)の排他関係を成立させる実験に成功。
解決:4種の排他的な報酬設計を実装
  • GOでは、4種アセットでの排他関係を構築
  • ジェムの希少性を担保 & 需給に合わせた価格調整がされるように

3. 靴バーンによるエナジー確保

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  • エナジーは、自動回復しない。
    • STEPNでは、6時間ごとにエナジーが自動回復していた。
    • GOでは、エナジーを獲得するためには、靴をバーンするしかない
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  • エナジーキャップ(一日に消費できるエナジー量の上限)が存在
    • 「これまでに靴をバーンして獲得したエナジーの総量」により、エナジーキャップが決定される
    • 最大値は30
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エナジー獲得の例 - ex1) - コモン靴を一足バーンして、90エナジーを獲得した。 - 90エナジーを獲得したので、エナジーキャップは02になった。 - つまり、このアカウントでは毎日2エナジーを消費できるようになった - なので、90/2=45日かけて、このエナジーを消化できる。 - ex2) - ex1のあと、更に追加でコモン靴を4足バーンして、360エナジーを獲得した。 - 90360エナジーを累計で獲得したので、エナジーキャップは24になった。 - 毎日2エナジーしか消費できなかったところ、毎日4エナジーを消費できるようになったので、毎日2倍の稼ぎを得られるようになった!
  • 靴数ではなく、累計獲得エナジーにより毎日消費できるエナジー量が決定されるようになったことで……
    • 「長く続けているプレイヤーが有利」な構造に
      • プレイを続けると、自然とエナジーキャップが増えていくため、長くプレイし続けることに対して、構造的にアドバンテージが発生するようになっている
      • ogでは、エナジーを増やすためには単に靴数を増やせばよく、この増やした靴を売却することで、抜けたい時に即資金回収をすることが容易だった。=エナジーに対する投資リスクはほぼ0。
        • 一方、GOでは、エナジーキャップに対する投資は不可逆。この投資はサンクコスト化するので、大きく投資をしたプレイヤーほど撤退コストが高くなる
          • 短期で稼ぐプレイはかなりしづらくなった
    • 各個人の“Moveする時間”のコントロールは難しくなった
      • エナジーを増やすことに対してのコストはかなり高くなるはずなので、最初から「俺はめっちゃ歩きたいから、いきなりエナジー20にして毎日120分のウォーキング習慣を作るぞ!」…といった選択は取りづらい。
      • ほぼ全員が「まずは短い時間から始め、ゲームを続けるにつれてMoveできる時間も自然と長くなっていく」…というユーザー体験になるように設計されている。
    • アカウントの成長に対して、資産をいつでも注ぎ込めるようになった
      • アセット価格が安くなったタイミングなどで、特にガチ勢が今後のために投資する先を恒常的に用意することが可能に
      • これまでもアカウントのレベルを上げるGMTバーンはあったが、それがずっと身近で、稼ぎ効率と直結した行為に。
  • 時間回復ではなく、靴をバーンしてエナジー回復するようになったことで…
    • 「NFTを消耗させないと、エコシステムがいずれ死ぬ」という問題に対して、HPや寿命といったシステム以外での回答を提示
      • ①自分の愛着のあるNFTや成長させたNFTを使い続けることを可能にしつつ、②一定量のNFTがエコシステムから自然と取り除かれていく 状態を両立
        • 寿命システムは、②の要素をクリアしていたが、NFTに愛着をもたせたり、パラメータやスキンをカスタマイズする…といった要素とのかみ合わせが悪い
        • HPシステムは、①の要素をクリアしていたが、②でバーンされるのは靴ではなくジェムであり、不完全にしか解決できていなかった
    • 「時間」により無限に積み上がってしまう先行者利益を抑制
      • 特に安定的な経済を実現したNFTゲームにおいては、先行者利益の大半は「先に始めていた人間ほど、稼げる”時間”が長くなる」ことによって生み出される。
        • ⇒時間というリソースの価値を下げることで、先行者利益をマイルドにした
↗️
課題:「長くSTEPNを使い続けているプレイヤーほど報われる」をシステム化できていない
  • これまで、長期的にMOVEを続けてきたプレイヤーを優遇するよう仕組みは作れていなかった。
    • 仕組みではなく、エアドロップやバッジシステムなどを通じて、単発での対処が中心だった。
解決:プレイしていれば必ず増えていくエナジーの累計消費量を、重要なパラメータにする
↗️
課題:靴を世界から減らすための仕組みがまだ足りていない
  • エンハンス・フュージョンや虹靴の実装など、世界に供給されている靴の数を減らすための施策をたくさん打ってきたが、それだけで靴の供給量を安定的に減らせているとは言い難い。
  • どちらかというと、上位層のみを対象とした施策が多かった。
    • 所持している靴数の少ない初心者・中級者に靴をバーンさせることは、かなり難易度が高い。
解決:靴バーンをゲームプレイにおいて避けては通れない点におくことで、靴需要を喚起しつづける

4. スニーカーの最大レベルが20→60に

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  • スニーカーのレア度に応じて、レベル上限が変更されるように
    • GasHeroでも採用されたシステムを踏襲
    • 「レア度に応じて、ステータスの上がり幅が変わる」だけでなく、「レア度に応じて、レベル上限が変わる」というシステムを採用した方が、ユーザーが直感的にレア度の価値を理解しやすい
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↗️
課題:「レベル上げ」という、ユーザーにとって投資ストレスが小さいトークンシンク(トークンのバーン先)を有効活用しきれていない
  • ogにおいては、レベル上げに使用されるGSTやGMTの量は、エコシステム全体から見たときに非常に小さく、トークンシンクとして十分に機能しているとは言い難かった
  • GasHeroでは、このトークンシンクを、寿命システムによって頻繁に使わせることでかなり大きな存在にしている。
解決:高レベル靴のレベル上げに必要なアセット量を大幅に増やすことで、トークンシンクとして機能させる

5. スニーカー貸し出し機能の導入: The Haus

  • スニーカーを貸し出すことを軸にして、プレイヤー間のつながりを強固にするシステムがThe Hausである。
    • これは、既存のゲームにおける「スカラーシップ」機能の側面と「ギルド」機能の側面の両方を持つ
  • Haus機能を理解する上で重要なのは、ホストとゲストの関係
    • ホスト
      • スニーカーのオーナー。
      • 自分の靴をゲストに貸し出して、代わりにMoveしてもらうことが可能
        • 貸し出し時にオーナーが設定できるのは…
          • どれだけのエナジーを毎日そのゲストに渡すか
            • 1ゲストあたり、毎日2~4エナジー
          • 収益分配率
            • 0~100%
          • 貸し出し期間
            • 2~4週間
      • 5人まで、ゲストを自分のHausに招ける
      • ホスト自身も毎日2エナジーはMoveしないと、ゲストからの収益を受け取ることはできない
    • ゲスト
      • 各ホストのHausに所属することで、靴を貸してもらうことができる
      • 初期費用は0。オーナーが設定した収益分配率に基づいてMove報酬の一部を獲得。
      • 割り当てられたエナジーを使いきれなかった場合、そのエナジーは翌日ホストに返却される
  • Haus機能を使用する、ホスト側のメリット
    • エナジーをMoveしなくても消費できる
      • 特に大量のエナジーを消費しなければいけない場合、毎日のMoveの負担を軽減できるのはありがたい
    • 収益上限を超えてEarnできる
      • ゲストの稼いだ金額は、ホストの一日の収益上限に含まれない。
    • 自分のHausの紋章をレベルアップさせることができる
      • ゲストがMoveしてくれることで、自分のHausの”紋章”が育ち、自分もそのユーティリティーを享受できる
      • (Hausのクラスを上げるための条件の詳細は開示されていない)
  • 特殊な関係、「バディ」
    • 靴の貸し出しではなく、プレゼントをする機能
    • 主に、配偶者・家族・恋人などを対象に使う機能としてデザインされていると思われる。
    • ハウス機能の中にどのように関わるかは、現状不明
↗️

6. 3Dアバター・Outfitの導入

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  • STEPN GOでは、各ユーザーの3Dアバターが導入され、その衣装(Outfit)をカスタマイズすることができる。
    • Outfitは、CharmモードでMoveした時に獲得できる OF(Outfit Fragment) を集めることで生成が可能。
  • Outfitには、おそらく直接的なユーティリティーはない
  • 次の項目である、「Web3ソーシャル機能の導入」との合わせ技で初めて意味を持ってくる機能

7. Web3ソーシャル機能の導入: インタラクティブマップ

  • アプリ内でのつながり(ソーシャルグラフ)や他者の存在を意識させるための中核機能として、インタラクティブマップが実装される。
(抜粋:Yawn氏のTwitterでのポスト) STEPN GOでは”インタラクティブマップシステム”という新しいシステムも導入される。 自分の地元の地図をズームインして表示したり、世界地図をズームアウトして表示したり…そんな風にマップを楽しんで眺めながら、ユーザーは他の誰かの3Dカスタマイズ可能なアバター&アウトフィット(衣装)を見てフレンドリストに追加したり、チャット機能でオフラインイベントを円滑に運営できたりするんだ。
  • マップを軸にした、具体的なソーシャル機能
    • インタラクティブ・マップでの可視化
      • ユーザーはインタラクティブ・マップ上に自分自身を表示することができ、他のユーザーが自分の3Dアバターや衣装を閲覧することができます。
    • チャットボックス
      • マップ上にチャットボックスをドロップして、他のユーザーと交流することができます。
        • (掲示板のようなもの?)
    • ランニング招待状
      • マップ上にランニングの招待状を置くことで、他のユーザーをGGTを使ったエクササイズに招待することができます。
      • 他のユーザーが参加するには登録が必要で、登録しなかった場合はペナルティが適用されます。
    • フレンドシップとコミュニケーション
      • ユーザー同士をフレンドリストに追加し、チャットをすることができます。
    • シェイク&マッチ
      • 携帯電話を振ることで、同じ運動強度の人とマッチングする。
      • これにより、チャットをしたり、遠隔地での共同ランニング・セッションを企画したりすることが容易になる
  • こうしたソーシャル機能を充実させることの大きな意義は、各アセットに”稼ぎを多くする”以外の価値を持たせることが可能になること
    • STEPNコミュニティが大きく、活発になり、それを意識する人が増えた時に、珍しいスキンなどは初めて価値をもつ
↗️
課題:アセットに”稼げる”以外の価値付けを、あまりできていない
  • “稼げる”以外の観点でも各アセットが価値を持っていることは、エコノミクスの長期的な安定において、何よりも効果的。
    • 皆が単一の指標だけでアセットの価値を測るとき、市場はうまく機能せず、ゼロサムゲームから抜け出すこともできない。
    • “稼げる”以外の価値としては、
      • コミュニティの中で社会的な評価を受けれる
      • 所有していることそのものに満足感がある etc…
  • こうした価値付けの基礎になるのが、社会的なつながり
    • 例えば、誰とも会わずに生活している人にとって、”良い服”が価値を持ちづらいのと一緒。
      • “あの人から好意を持たれる服装をしたい” ”職場で浮かないくらいにはちゃんとした身なりでいたい” “誰よりもイケてる格好をしたい” などといった欲求の基礎になるのが、他者の存在や他者からの目線。
  • ogにおけるスキンなどは、十分に機能していたとは言い難い
    • 靴を見せびらかせる機会、自然と他者に見られる機会が、あまりにも少なかったため。
    • 自分の中だけで完結するコレクション欲や満足感などに対しては多少アプローチできていたが、それだけでは弱かった
解決:社会的なつながりを作り出す仕組みを、アプリ内に多数導入する

8. ジェム獲得経路の変更

  • GOでは、ジェムは直接ミステリーボックスから獲得することはできない
    • ミステリーボックスからは 原石 が獲得でき、その原石をカット(加工)することでジェムにすることができる。
      • 加工には多少のコストがかかる
    • アップグレード(いわゆるパリチャレ)は、原石に対して行う
      • ジェムに対して行うことはできない。
  • 各ジェムの色・レベルに対応した原石が存在。
    • 例外的に、加工した時になんのジェムになるか分からない「ミステリー原石」も存在。
  • [考察]なぜ「カットをする」という1アクションを追加することにしたのか?
    • トークンの使い道を増やすため
    • ジェムの買い替えを促進するため?
      • 「一度ジェムにすると、アップグレードができない」という点が、本質的な変更点。
      • もう使わなくなったジェムを、アップグレードの素材にできなくすることによって、上位ジェムの価値を少し上げることができる
    • ミステリー原石をなんらかの方法でうまく使うため?
      • 加工をすることをトリガーにしたイベントを予定?
      • Karma・Charmの実装前に、ミステリー原石をユーザーに溜めておいてもらうことで、それらの実装後にすぐにKarma・Charmジェムの供給が行われるようにする…とか

9. シャーデンフロイデプールとPvPリーダーボードの導入

  • 2年前からその存在がほのめかされていたシャーデンフロイデプールが、当初予定とは形を変えて実現
    • 昔は、GMTのステーキング報酬としてシャーデンフロイデプールからの配分が予定されていた。
    • 当時のプールに報酬が貯まる条件は「パリチャレの失敗」「レア度の高いシューズボックスからレア度の低い靴が出た」などの、ユーザーの誰かに不幸なことが起こった時に、それで失われた金額が貯まる…というものだった。
    • シャーデンフロイドとは、ドイツ語起源の言葉で、ざっくり言うと「他人の不幸を喜ぶ気持ち」である。
  • Schadenfreudeプールは以下のソースからの収益を蓄積するプール:
      1. 不正行為のフラグが立ったアカウントから凍結された収益のすべて
      1. PAPER FEETから減少したすべての収益
      1. 1日に2エナジーを使用するという最低条件を満たせなかったホストの収益はすべて減少
      1. 分散型流動性プールのGMT。
  • 2年前にogで実装予定だったシャーデンフロイデプールは、「あらゆるユーザーの不幸」が蓄積されるプールだった。
    • GOでは、「不幸なことが起こっても仕方ないユーザーの不幸」が蓄積されるプールになっている。つまり、ちょっとマイルドな機能になった。
      • チーター
      • 靴を買ったのに放置してる人
      • 誰かに歩かせて、自分は全く歩いてない人
  • シャーデンフロイデプールが貯まる条件は、全てユーザーからの徴収である。すなわち、STEPN GOではGMTが新規産出されない
    • STEPN OGだけが、唯一のGMTマイニング方法であり続ける
    • GMTエコノミクスにおけるGOの立ち位置は、GasHeroと同じ。GOのユーザーが増えれば増えるほど、GMTの価値が上がり、唯一GMTをマイニングできる手段であるSTEPN OGのアセット価格が上昇する構造になっている
↗️
課題:チート排除などの取り組みに、あまり理解を得られない
  • こうした試みは、長期的にはユーザーに莫大な利益を与えるものだが、ユーザー視点では短期的にはその価値を実現しづらい。
    • むしろ知り合いがBANされたり、自分が被害を被ったりといった、「身の回りで観測できる嫌なこと」は起こってしまうために、ネガティブに受け止められてしまいがち
解決:そうした改善の成果の一部を、短期的・直接的にユーザーに還元するルートを作る
  • 望ましくない行動をするユーザーの排除・ペナルティの必要性をただ語るのではなく、それをしたことによって得られる利益の一部を先取りしてユーザーに配分することで、理解を得やすくする

10. 運動習慣をつけさせ、離脱を防ぐ仕組み:フィットネスレベル

  • 新規のユーザーは、まずSOFT FEET(柔らか脚)状態で始まる。そこから数日歩き続けるとSORE FEET(痛む脚) になり、14日歩き続けると STRONG FEET(強靭な脚)になる。
    • STRONG FEETの時に、歩くのを一日やめるとSOFT FEETに戻る。
    • 多分ogユーザーなら、みんな SOFT ⇒ SORE ⇒ STRONG の足の変化を実際に体感したことがあるのでは。
      • 私も、2年前にSTEPNをやり始めた時に、1週間くらいで本当に足が痛くなった。血豆もできた。が、一度そこを過ぎてからは足が本当に強くなったように思う。何時間歩いても全然痛くならない、強い脚を手に入れた状態だ。
  • それぞれの状態の時に、収益率が異なる。
    • SOFT:収益率100%
    • SORE:収益率50%〜
    • STRONG:収益率150%
  • 上記の3つを基本形として、特殊な状態が2つ存在する。
    • PAPER FEET:収益率10%
      • 60日間、全く歩かない日々を続けるとなる状態。
      • この状態のとき、あらゆる資産の売却や譲渡は不可
      • SOFT FEETに戻すためには、30日で120エナジーを消費することが必要
    • DIAMOND FEET:収益率150%
      • 1000日間休まず歩き続けると、DIAMOND FEETになれる。
      • 一度DIAMOND FEETになると、そこからは歩くのをお休みしてもSOFT FEETやPAPER FEETになったりしない。
  • つまり、3つのタイムスパンでのユーザー離脱を防ぐ仕組みが、フィットネスレベル。
    • SOFT ⇒ SORE ⇒ STRONG
      • (短期)一日も欠かさずやり続けないと、損をしてしまう
      • 運動習慣をつけさせることで、離脱を防ぐ
    • ⇒ PAPER
      • (中期)60日連続でMoveしなかった場合、かなりの痛手を追う
      • 何日かお休みしてしまったとしても、復帰する理由付けを作る
    • ⇒DIAMOND
      • (長期)1000日継続すると、ちょっとしたご褒美がある
      • 長期間頑張り続けるための、先の長いゴールを用意する
  • PAPER FEETになってしまった時に、また運動をある程度習慣化しないと資産を一切売却できなくなる…というのも非常に上手い。
    • STEPNの靴を売りたくなるタイミング1位は「最近もう歩いてないな…この機会に資産全部売っちゃうか」と思った時のはず。このタイミングを完璧にブロックしている。
↗️
課題:ユーザーがSTEPNのプレイを完全にやめてしまうタイミングが、明確にいくつかある
解決:モチベーションの高まるタイミングでは報酬を下げ、低まるタイミングでは報酬を上げる、という報酬グラフを作る
解決:一度運動習慣が途切れてしまったユーザーが、STEPNを再開するきっかけを報酬設計で作る
  • 人がゲーム・運動を離脱してしまうタイミングを、あまりにもよく理解した設計。すごい。
    • おそらく、ogで離脱したユーザーの行動分析をする中で、導き出された日数・設計なのだろう。

11. 新しいMintシステム

  • ogのMintシステムからの変更点
    • スニーカーに左右の概念が追加され、左右ペアでないとMintできなくなった
    • ミントスクロールが削除され、代わりにMintQuota を消費するように
      • MintQuotaは、エナジー消費量に応じてもらえる
  • 左右のペアでないとMintができない、という縛りは、GasHeroの「男女ペアでないとMintができない」というシステムの継承
↗️
課題:本質的にやって欲しいこと(Move)ではなく、ある種の必要悪として導入されていること(Mint)をするユーザーの方が、稼げてしまう
  • 特にサービス開始頃の時期に、この傾向が顕著だった。
  • この課題を解決するためにogで導入されたのがミントスクロール。
    • Mintは大きな利益を生み出す源泉であり、その利益の幾ばくかを歩く人に渡すシステムがミントスクロールだった。
解決:歩いた量に応じてミントできるようにする
  • Mintという行為の旨みを、(ミントスクロールのような形で)一部だけMoveする人に還元するのではなく、100%全部Moveユーザーに渡しちゃおうぜ、という発想。
  • 歩かずに靴生産工場をする、という、運営からすると望ましくないプレイスタイルを完全に排除する方式

12. FSL IDの必須化

  • ゲームをプレイするにあたって、FSL IDの登録が必須になった。
  • FSL IDは
    • 「メールアドレスで登録できて、シードフレーズをメモっておく必要がないウォレット」と言える
      • さらに、GGTをガス代としても使うことができ、GMTへの変換もシームレスに行うことができる
    • FSLのサービス全てを横断したポイントプログラムでもある。
      • FSL経済圏の他のプロダクトにも触りたくなるようなきっかけとなる
↗️
課題:ogはクリプト初心者にかなりフレンドリーな設計だったが、それでもまだ一般的なWeb2サービス・ゲームと比べてかなり難しかった
  • MetamaskやPhantomなどを使用する一般的なウォレット管理は、Web2ユーザーにはあまりに高いハードルだった。
    • ウォレット・シードフレーズ・アドレス・チェーンなどの概念理解
    • 詐欺などの標的になる可能性
    • やっていいこと、やったらまずいことの把握
解決:中央集権的な管理をする代わりに、STEPNユーザーにとって真に使いやすいウォレットを提供する
  • 分散・自律・真の所有など、中央集権にすることで捨てざるを得ない部分については、STEPNユーザーが本質的に求めているものではないことに気づいたのだろう。
  • FSLがここまでの数年で積み上げてきた信頼があってこそ、こうした中央集権的な仕組みを作っても、ユーザーに受け入れられるようになったとも言える。
ーーー
昨年、STEPNには大きなアップデートがありませんでした。
STEPNが抱えていた数々の課題。
それを運営側でもきちんと認知しているにも関わらず、解決するためのアプローチが一向に行われないのはなんでじゃい!と、ユーザー各位はヤキモキしていたことと思います。
(少なくとも私はヤキモキしながら歩いてました。)
しかし、それらの課題の多くを一気に解消する「STEPN GO」という新アプリが発表されたこと。
本当に、飛び上がるくらいに嬉しいですね。
先週発表が行われた際には、リアルタイムで発表されるSTEPN GOの情報を聞きながら、私は実際にぴょんぴょん飛び跳ねていました。もしSTEPNがJump 2 Earnアプリだったら、相当Earnできてたと思います。
STEPN GOは、1000万人のユーザー獲得をまず目標に据えている、と開発者のYawn氏は語っていました。
そして私は、ホワイトペーパーを読んで、STEPN GOにはそれだけのポテンシャルが十分にあるなと感じています。
1000万人に到達するのはかなり先の話かもしれませんが、まずは最初の数千人を作ることに、この記事を通して少しでも貢献できたらなと思います。
記事の内容が参考になった方がいたら、ぜひシェアなどしてくれると嬉しいです。
ではでは。
文責:Kuro
↗️
課題:知人にSTEPNを勧めようとしても、最初に乗り越えてもらわなければいけないハードルがあまりに高すぎる
  • ハードル
    • 最初の資産購入までのステップ数が多い
      • まず靴を入手するために、取引所口座の開設、適切な靴の選定、ゲームルールの把握、などといったステップが多い
    • クリプトの基礎を教えなければいけない
      • そもそもブロックチェーンやトークンとは、ということを一定は理解してもらわないと、リスクや注意事項などについての説明ができない
    • 投資リスクについて理解する必要がある
      • 多額の初期費用がかかることなので、投資リスクについても入念に説明をすることがほぼ必須になる
解決:靴を無償で貸して、ノーリスクでSTEPNを始めてもらうための仕組みを整える
  • ノーリスクで始められるようにすることで、初期に説明しなければいけないことや整えなければいけないことを、全て後回しにすることが可能に!
    • STEPNの良さを体験した後に、やる気を持って初心者が自分で学べるように
  • ホスト・ゲストの両方にとってwin-winな仕組みを作ることで、両者の心理的負担も軽減
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